上野 妙子さん
フルブライトFLTAとしてのSt. Olaf Collegeでの約9か月間の留学が終わり、とても有意義な充実した期間を過ごせたことに感謝しています。私は大学卒業前に大学で日本語を教えている先生にこのFLTAのお話を教えていただきました。初めてこのFLTAの話を聞き、将来英語教員になりたい人のためのプログラムと知った時に、私は「これが、私がしたい理想の留学のかたちだ」と思い、すぐに応募を決めました。プログラム参加が決まったと同時に、St. Olaf Collegeに派遣されることを知った時は、心から喜びました。
St. Olaf Collegeでのプログラム開始の前に、サンフランシスコのStanford Universityで行われたFLTAのオリエンテーションでは、様々な国から参加しているFLTAに出会い、一緒にレクチャーを受けました。5日間というとても短い期間でしたが、レクチャーで言語教育についてともに学び意見交換をしたり、またそれぞれの文化について話したり、とても素敵な時間でした。
サンフランシスコでのオリエンテーションを終えて、ミネソタ州ノースフィールドにあるSt. Olaf CollegeでのFLTA生活が始まりました。日本語のTAとして、そして学生として授業を履修する毎日に初めは少し苦戦しました。しかし、時間が経つにつれて、それぞれの場面で楽しめるようになりました。
日本語の授業でのアシスタントは、日々のクラスではもちろん、先生や学生との関わりを通して、たくさんの事を体験しながら学ぶことができました。大学時代に習った日本語教授についての知識を実際に現場で経験し、わからないことや疑問があればすぐに先生に聞けたので、実践的に学ぶことができたと思います。また、学生のチューターとして日本語の学習をサポートするなかで、学生にとって何が難しくて、それをどうすれば伝えることができるかを考える機会が多くありました。それによって、学生だけではなく、私自身も学べるという点でとても有意義な活動でした。
また、日本語を学習している学生のほとんどが日本の伝統的な文化やポップカルチャー、文学や歴史に興味を持っていました。私は日本人ですが、彼らの視点から改めて日本の文化について考えるきっかけをもらい、またポップカルチャーについては彼らに教えてもらうことも少なくありませんでした。
日本語TAとして以外に学生として、私は秋学期にアメリカの歴史と教育心理学の授業を履修しました。アメリカの歴史については、私はあまり知らないからこそ学んでみようと思いました。授業の内容はコロンブスがアメリカ大陸を発見してから独立戦争が終わるまでの歴史の変動についてでした。日本史や世界史の授業にでてくるアメリカの歴史はごく一部でしかなく、私が今までに知らなかったアメリカというのを知ることができました。また、日本と比べると歴史が短いアメリカですが、歴史について詳細に学ぶので、その違いについて驚きました。
教育心理学の授業では、心理学はもちろんのこと、学習法や評価の方法を学びました。大学時代に教職課程の中で教育心理学を履修したとこがありますが、この授業では今まで知らなかったことなど、また新しい考えを知ることができました。そして、授業の一部として、週に1回2時間学習ボランティアとして近くの小学校の3年生のクラスに参加しました。日本とか違うカリキュラムで行われている教育や、日本とは異なった多様性というのを目にし、そこから学ぶことが多くありました。この秋学期の4か月間は自分が想像していたのよりも、あっという間に進んでいきました。
秋学期を終えて、12月中旬にはワシントンD.C.で行われたFLTAのワークショップに参加しました。このワークショップには全言語のFLTAが参加し、その時にサンフランシスコのオリエンテーションで一緒に過ごした仲間に会うことができました。この5日間もとても有意義なもので、講師の方によるレクチャーやFLTA参加者によるプレゼンテーションで、新たな学びに出会う機会がたくさんありました。各国からのFLTA仲間に会うのはそれが最後の機会となりましたが、今でも連絡を取り合っている仲間もできました。
冬の休暇中は大学で出会った友人の家にお世話になり、アメリカのクリスマスの過ごし方やお正月の過ごし方を体験することができました。また、普段は寮で生活しているため、友人の家ではアメリカのアットホームな家族の温かさも感じました。この冬休み中に経験したことも、私がこれから教師になったときに生徒たちに伝えていけるアメリカ文化です。
休みが明けて、St. Olaf CollegeではInterimと呼ばれる1ヶ月集中型の学期が始まりました。この間は日本語の授業がなかったため、私も学生として集中して勉強に励もうと思い、都市部における貧困と教育という授業を履修しました。とても内容の充実した1ヶ月間で、実際に2週間都市部の小学校で教育現場を体験することもできました。授業を通して、アメリカにおける貧困と教育の課題というのを目の当たりにしました。この授業で学んだことは一生忘れないというくらい、有意義な時間でした。
春学期は秋学期と同様に日本語TAとして学生としてアメリカの教育について学びました。秋学期に比べると、慣れてきたということもあり、毎日のTAとしての生活がどんどん楽しくなりました。また、履修している授業でも、継続して近くの小学校でのポランティアを行い、その生徒たちとの関わりも少しずつ深くなっていきました。秋学期に比べて、さらにあっという間に4か月が過ぎていき、気づけば自分が日本へ帰国する時期になっていました。
この9か月間は何にも変えられない貴重な時間だったと思います。そんな時間を送ることができたのも、日米教育委員会の皆さんやアメリカのIIEの皆さん、St. Olaf Collegeで出会ったすべての人のおかげだと思っています。このことに感謝しながら、この経験を自分の人生でおおいに活かしていきたいと考えています。この2学期から講師として中学校で英語を教えることが決まりましたので、FLTAで学んだことを現場で活かし、そしてアメリカで経験した文化を生徒たちに伝えながら、英語の楽しさと大切さを伝えていきたいです。
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