2009年09月09日

2008年度フルブライト語学アシスタントプログラム参加者最終レポート第四弾!

Carleton College
新川美幸さん

日本へ帰国してから、約1ヶ月が経ちました。FLTAとして、ミネソタ州のカールトン大学へ派遣していただき、日本語アシスタントとして働いていたあの頃の生活が懐かしく、いかに特別であったかを気付かされるばかりの毎日です。

春になり、前回の2月のレポートから劇的に変わったことがありました。それは、学生の日本語の伸び具合です。昨年9月に日本を勉強し始め、ひらがなやカタカナも知らなかった1年生が、10ヶ月間の日本語の授業を終えたときには、自分たちで考えたスキットを披露できるまでになっていました。

約10分にわたる日本語でのスキットです。自分たちで脚本をし、台詞を覚えるのですが、中には一つの間違いもおかさなかったグループがいて、これには教授も私も本当に驚かされました。学生も楽しそうに演じており、本当に嬉しかったです。なぜなら、カールトンへ来て、私がまず最初に決めた目標を達成できた気がしたからです。それは「自分がカールトンにいる間に、学生の日本語が少しでも上達するように、精一杯、手助けをすること」でした。一年しかカールトンにいられないからこそ、とにかく自分をできるだけ活用して、日本語が上手くなって欲しかったのです。

私は学生に対して、授業外であっても常に日本語で話しかけ、学生が間違えたときは積極的に注意するようにしていました。初めは困惑していた学生たちも、時が経つにつれて理解してくれるようになり、最後にはどんな内容でも、自分たちが習った範囲内での文法や単語を上手く使って話してくれるようになりました。私の英語よりもみんなの日本語の方が上手なのではないかと思ったほどです。

また、私は日本の文化を伝えることが仕事の一環でもあったので、「映画の時間」「ランチテーブル」「お茶の時間」「ラジオの時間」を、週に1回ずつ、後半期も持たせていただきました。これらのイベントは、自由参加となっています。秋学期、冬学期は20人分ぐらいのテーブルがあっという間に埋まり、席が探せないほどだったランチテーブルも、春学期になると授業の関係で来られる学生が極端に少なくなりました。

あまりに学生が少ないと、来てくれた学生が日本語を話す相手がおらず勉強にならないため、こっちも学生集めに必死でした。ポスターを掲示したり、Eメールを送ったり、スタンプカードを作ったりの試行錯誤の日々でした。スタンプカードとは、イベントに来た学生は日本のシールを1つもらえ、それがカードいっぱい貯まると、なにか日本に関連したグッズがもらえるというものです。学生はこのアイデアを大変気に入ってくれ、それ目当てでイベントにたくさん来てくれる学生もいました。

ミネソタの冬は、寒いときだとマイナス30度ぐらいにもなります。そんな極寒の中、自分のイベントのためにわざわざ自分の寮から歩いてきてくれたと思うと、それだけで嬉しくなることもしばしばでした。学生も秋学期と比べると春学期にはすっかり心を開いてくれており、間違えることを恥ずかしがらず、質問もたくさんしてくれるようになりました。教師と学生間の信頼関係の大切さを改めて思い知らされました。

私は、LA(ランゲージアシスタント)という傍ら、学生として毎学期授業を1つ取ることができたので、私が住んでいたところは学生と同じ寮でした。教師でもあり、生徒でもあるのが、FLTAです。普段、「先生」と呼ばなくてはならない人物が一緒に住んでいるということで、寮内で会うと戸惑う学生もいましたが、そんな中立な立場だからこそ、学生の新たな一面を垣間見られることもありました。

毎週膨大な数の単語を覚えなくてはならず、小テストは毎日という中、本当はもう日本語を勉強するのに疲れてきているのではないかと疑問を持つこともありました。しかし、実際は寮の廊下のホワイトボードには日本語でメッセージを書いていたり、学生の部屋に立ち寄ってみると動画サイトで日本に関するビデオを見ていたり、本当に日本が好きで、日本語を学びたいと思っているんだ!と気付かされ、これはまさに嬉しく、この立場ならではの特権だと思いました。

この10ヶ月、カールトン大学でLAとして日本語を教えられたこと、本当に幸せに思います。素晴らしい先生方、私を信頼して頼ってくれた学生、かけがえのない仲間、本当にたくさんの人たちに出会うことができ、一生に残る特別な経験をすることができました。また派遣先の大学以外でも、フルブライトを通じて、大切な仲間に出会うことができました。

私が派遣された2008年には、8月と12月、夏と冬にわたって2回のオリエンテーションがアメリカ国内で催されました。オリエンテーションでは、米国内の大学教授による教授法のセッション、他には生徒の注意を惹く方法をマジシャンがショーを披露して教えてくれるという興味深い内容のセッションまでありました。夏のオリエンテーションでは25人ほどの、冬のではなんと400人ものFLTAに出会うことができました。400人、教師を志す人ばかりです。中には私よりだいぶ年上で、母国では大学で教えていた経験のあるFLTAもいました。みんな、教員を目指す者として、見習うに値する素晴らしい仲間です。オリエンテーションが終わり、それぞれ自分の州、大学へ戻った後も支え合い、たくさんの勇気をもらいました。

FLTAの一員として、このオリエンテーションに参加させていただいたこと、またカールトン大学でLAとして10ヶ月日本語教育に携われたことの全てが夢であったかと思うぐらい、かけがえのない経験となりました。このような素晴らしい機会を与えてくださり、常に支えてくださったIIE、日米教育委員会の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。本当に、ありがとうございました。

posted by スタッフ at 17:21| 東京 ☁| FLTA レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする