U. of Scranton
藤田 恵里子さん
2008年8月中旬に渡米し、怒涛のような9か月間を過ごして2009年6月に無事プログラムを終え、帰国しました。渡米前は、長い人生における9か月なんて、ほんの束の間でしかないと思っていました。でも、実際この9か月間は、今までの人生のどの9か月間よりも長く、そして密度の濃いものになりました。正直、就職してからは1年がとても早く過ぎるように感じ、毎年「この1年で私はどれだけ成長したのだろう。」と、焦りのようなものを感じていました。しかし、私がFLTAプログラムでアメリカで過ごした9か月間は短いながらも、自分を大きく成長させ、人格形成に影響を与えたことは間違いありません。
前期は、周りに日本人も日本食もほとんどなく、生活環境、友人、職場等すべてが全く新しい中で、その環境に慣れるのに苦労し、限られた時間の中で「アメリカを楽しむ」ことなんてできないのではないかと半ばあきらめてしました。しかし、前期にある程度苦労してレッスンプランを考えたおかげで、後期は授業以外のことにも時間を割くことができるようになりました。
後期に私が力を入れたことは、日本文化の紹介です。スクラントンには、アジア人も少なく、日本人もほとんどいないため、大学にも町の中にも日本の文化というのがありませんでした。日本語の生徒のほとんどは、アニメに関心があって日本語を勉強していましたが、私は日本にはアニメ以外にも面白い文化があるのだということをぜひ彼らに紹介したいと思いました。
はじめに企画したのは、「茶道」です。正座をしたことも、お抹茶を飲んだこともない生徒たちと一緒に「茶道」のお手前をしました。生徒たちも初めての経験をとても楽しんでくれていました。
2月は、節分のイベントを開催しました。アメリカでは存在しない「鬼」の紹介をし、それぞれに鬼の絵を描いてもらいました。大学生の彼らには、少し幼稚で楽しんでもらえないかもしれないと不安に思っていたのですが、意外と喜んで鬼の絵を描き、豆まきも楽しんでくれました。またその際、私の出身地秋田県男鹿市の「なまはげ」も紹介しました。生徒たちは、アメリカにはない「鬼」や「なまはげ」という存在から、日本ならではの考え方、概念を感じることができていたようでした。
3月は、ひな祭りです。桜餅は材料がなかったので、代わりに「大福」を作りました。アメリカ人は大福の食感を気持ち悪がると聞いていたので、心配していたのですが、自分たちで作った大福は格別だったのか、自分で作った大福をおいしそうに頬張っていました
4月は、生徒から「ポケモンに出てくる、白くて三角で、真中に黒い四角いのがついている食べ物を作りたい」とのリクエストがありました。彼らがおにぎりのことを言っていると気づくのに少し時間がかりましたが、この時、生徒たちは、ポケモンに出ていた「白くて三角の真ん中に四角いのがついている食べ物」の“白い部分”はご飯で、“真中についているもの”は海苔であるという認識がないのだということにはじめて気づきました。おにぎりのように日常的に食べられているものでさえ、彼らは知らないのだということに気づき、私が当たり前だと思っていることも彼らには新鮮で面白いのだと改めて思いました。
日本語の面でも、はじめは挨拶も知らなかった彼らが、帰国するころには私がいつも使っていた相鎚の言葉を、意味を説明したこともないのに適切に使えるようになっていたことは涙が出るほど感動しました。日本に来たことも、日本人を見たこともない彼らが、日本についてさらに興味や理解を深め、日本語を学ぶ一助ができたことは、とても光栄なことでした。アメリカの大学で日本語を教え、生徒たちと出会えたこと、そしてその機会をいただけたことに心から感謝しています。
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