Colorado College
福西 啓子さん
私は、2008年8月後半より、FLTAとしてアメリカのコロラド州にあるコロラドカレッジと言う私立大学に派遣して頂き、主に日本語教師のアシスタントをさせて頂きました。前期は、周囲の環境に慣れるのに精一杯でしたが、後期には余裕を持って生活できている自分がいました。
アメリカの大学で、日本語教師のアシスタントとして仕事をさせて頂きながら、同時に学生としても時間を過ごさせて頂けると言う貴重な経験を通して、精神的に大きく成長させて頂いたと思っています。
以下に、私の具体的経験を述べていきたいと思います。
【コロラドカレッジでの後期】
学校 仕事 学業
私のコロラドカレッジでの前期、9月から冬休みまでは、学校生活、仕事、そして学業の三つに慣れることに終始したと言っても過言ではないと思います。自分の仕事にしても、学業にしても、質の高いものを仕上げるということに自分の時間をかけるということは、全くできませんでした。とにかく周囲の環境に慣れることに非常に苦労し、とにかく最低限のものを仕上げることでも精一杯でした。これには、コロラドカレッジがブロックシステムと言う、日本人が英語圏の大学で勉強するには非常に厳しいシステムを採用しており、そのシステム下で自分の専門分野に対する理解を深めながらも、慣れない仕事をしなければならなかった、という事があったと思います。私は日本で大学院1年生だったので、学習意欲が旺盛で、授業を履修した時は仕事と両立するのがとても大変でした。
ただ、その多忙な前期の中でやっていて良かった、と思ったことは日本語教師の先生方と、とにかく良い関係を築いたという事でした。後期になってくると、そうして前期で築いて来た信頼関係などから、仕事が本当にやりやすくなったように思います。やはり信頼関係が構築された後、意思疎通がうまくいくようになってくると、自分の気持ちも伝わりやすいですし、相手の気持ちもよく分かり、お互いに不満を募らせるということもありません。そうして前には自分でもうまくいっているのかどうかさえ、よく分かっていなかった仕事が、相手によって感謝されている、等々分かるようになってくると、やはり仕事も生活も楽しくなっていきます。このように後期になると、カレッジでの生活がとても楽しくなり、自分の時間や仕事、そして仕事の完成度などまでも客観的に(勿論完璧ではありませんが)ある程度見ることができるまでになりました。
人間関係/生活面
私は、人間関係を築く上で非常に恵まれた環境に派遣して頂いたにも関わらず、前期には、これに取り組む余裕が全くありませんでした。仕事以外にも、私は学業に対する思い入れが非常に強かったので、慣れない環境で一生懸命に取り組むあまり、周りが見えていなかった一面もあったと思います。
ただ後期になると、自分の仕事や学業をどのように、そしてどの程度までこなせばいいのか、などのコツが分かってくるので、余裕ができ、カレッジで自分と同じような仕事をしている同僚と時間を楽しむことができるようになりました。
コロラドカレッジには、日本語の他に、中国語、イタリア語、フランス語、スペイン語各種の教師を私のようにアシスタントしている半学生のような立場の人が一人ずついて、それぞれととても良い関係を築く事ができました。また、私が日本語を教えていた学生とも、クラスの外で付き合える良い関係を築くことができ、これらは私の一生の宝物となりました。
コロラドカレッジでの一年を振り返って得たもの
私は、コロラドカレッジでの一年を通して、仕事をする上での責任感や、同僚や上司との関係の大切さ、またそれに打ち込むことで得る達成感、自分の専門分野に対する知識など、ここには書ききれない様々なことを全身で吸収させて頂いたと思っています。
これらの経験を通じて私が学んだことで、ここで是非最後に書いておきたいことは、「異文化」間の人間関係についてです。私たちは、それぞれの属する社会や、その社会の歩んだ歴史、経済、政治状況によって固有の「文化」を持っていると言われています。アメリカ人ならアメリカ人の、日本人なら日本人の「文化」があるとされ、社会全体の政治、経済などの状況によってそれぞれの「文化」に対して新しい意味付けが常に繰り返されます。
確かに、我々にはそれぞれの「文化」によって肯定される相違が、ある程度は認められます。ただ、その相違以上に重要なのは個人レベルの付き合いによる相互理解です。なぜなら、その「文化」とは全く異なってとも言えるほどの個性が、それぞれの人間には育まれているからです。様々な学生と付き合っていく中で、私はこのことに気付かされない日はありませんでした。我々は違っていて当然ですが、その違いは紋切り型に固定されたものではありません。常に学び合うことができるのです。
最後に、私がFLTAで素晴しい経験をさせて頂くに様々な支援をして下さったフルブライト各関係部署の方々に感謝したいと思います。この経験を生かし、私はこれからも「異文化」理解に努めていきたいと思います。
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