2009年02月03日

2008年度フルブライト語学アシスタントプログラム参加者レポート第4弾!

Hollins University
多田 利恵さん

 女子校出身で、少しばかり教鞭をとったこともあったが、その生徒が全員外国人だったという経験はなかった。自分なりのイメージはあったものの、実際、教室で彼女たちに出会うと、新たな不安と緊張でいっぱいになった。

 TAの任務は、派遣先の大学や担当教官によって様々なようだが、私は初級・中級クラスのグループ別会話セッション、そして上級クラスの授業を担当教官と分担して受け持つことになった。私の派遣先であるHollins Universityはバージニア郊外の小さな女子大で、日本語のメジャーも、マイナーもない。ただ、一年間外国語を履修しなくてはならない。だから、生徒が日本語を受講している理由も様々である。もちろん、日本のポップカルチャーが好きな生徒もいれば、伝統的な日本好きもいる。アルバイト先で日本人を接客する機会があった、あるいは将来日本で英語を教えたい、日本で獣医になりたい、など感心してしまう理由もあれば、日本語しか選択肢がなかった、という正直ものの生徒もいる。そんな彼女たちに、私が滞在するたった一年で、何を伝えられるのだろうか。渡米直後の私の一番の課題であった。

 初級クラスのセッションでは、授業の内容を復習し、扱った単語やフレーズを一人一人練習させたり、質問に答えたりしている。もちろん、日本の文化や生活も話題にのぼる。当然会話は英語。しかし、自分の英語力など気にすることはない。生徒たちは語学を習得することの難しさを、十分理解してくれていることに気づいてからは、余計な肩の力が抜け、思ったこと、感じたことをどんどん伝えていこう、と思えた。
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 秋学期の最後の授業は、生徒たちによるスキットの発表だった。スキットの内容は、それまでに習った表現を用いて、グループで寸劇を作るというものだった。担当教官からこの課題が発表された時は、「そんなのは無理、できない」という声も上がった。どこの国の生徒も同じなのだろうか、いざ取り組み始めると真剣に、そしてかなり内容を詰めて考えていた。ただ、既習範囲のみでは当然足りず、手を入れざるを得なかったが、新たな、しかも少し高度な表現を知った彼女たちの輝いた表情をみて、難しhollins2.jpgい表現でもいいから、少しでも多くの日本語に触れることの大切さにようやく気づいた。そして授業当日は、趣向を凝らしたスキットをしっかりと演じる姿に感動してしまった。一見ただ訳した日本語を覚え、好きな衣装を身にまとい演じているようにも見えるが、やる気のあまり見られなかった生徒までもが生き生きとしている姿を見たり、それまでの過程を思い出したりすると、自分が何のためにここへ来たのか、その答えがなんとなく見え始めた。


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 もちろん私にとっての学びの場は授業中のみばかりではない。大都市では経験できないこと、感じることのできないこと、言葉に表すことはできないことがキャンパスの内外である。そして日本との違いがあるからこそ、この差が歴然とし、両者の良し悪しがわかり、それぞれが貴重な存在に思えてくる。任期の折り返し地点に立つ今、ここで出会った全てを大切に、教える者として、学ぶ者として、案ずるよりも、欲張りになって何事も体験し、また伝えるべきことを伝えていこうと心に決めた。

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(第5弾に続く…)
(J)
posted by スタッフ at 10:41| 東京 晴れ| FLTA レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする